第4話 赤い瞳
「ほっとけねェんだよ。同じ流れ者としてな」

 ヴェンのゴツゴツとした大きな手が、ヴェンの左足にしがみついている子供の頭を優しく撫でる。先程まで泣いていたせいか、子供の目元は腫れて赤くなってしまっている。

「この子達、目が赤いってだけで虐げられてしまうものね……」

 目が赤いのは生まれつきで、どうしようも無いこと。目の色を選べたらいいのに。とナギサは思った。

「カイトくん、連れていかれなくて良かったね」

 リースはヴェンの左足にしがみついている子供を見る。

「しかも、それで親に捨てられちゃう子もいるよね」

 カイトくんもそうだけど……。とリースは哀れむように、眉を下げた。

「そういう奴らが、住む場所を求めてここに流れ着いたんだ」

 だから、ほっとけねェんだよ。ヴェンの子供の頭撫でる様は、まるで父親や兄のようだ。

「それはいいけど、あんた、もうちょっと態度に気を付けなさいよね。ただでさえ、“流れ者”だ、ってオーディアス卿に目をつけられてるんだから」

「知るかよ。あっちが勝手に突っかかってきやがるからな」

「だから、もうちょっと下手に出ろ、って言ってんの!」

 キンドレッド卿が来てくれなかったら、ヤバかったんだから!とリースは肩をすくめた。
 ヴェンとリースのやり取りを眺めていたナギサは、うふふ、と微笑む。

「楽しい修行の旅になりそうね」

「「どこが!」」

 同時にツッコんで来たヴェンとリースに、ほらやっぱり、とナギサは楽しそうに微笑んだ。